Hyperstrata という名前についてと命名没案
先日、私は Hyperstrata というものを提案した[1]。 今回はこの Hyperstrata の命名について何を考えて行ったかと、そして没にした命名の没案についてまとめようと思う。
命名した理由
そもそもなぜ Hyperstrat などという微妙にカッコつけてるんだか気取っているんだかわからない名前をつけたのかについて。
何かしらの新しい概念の提唱者はその概念に名前をつけたがる。 それはたぶん、何か新しい概念を自分が提唱したという名誉が欲しいのかなと思う。 なんか別にそんな新しいことやすごいことをやっているわけでもなく誰でも思いつきそうなことに独自の名前をつけてしまっているのは見ていて痛々しかったりもする。
近年は ChatGPT などで自分の能力が上がったように錯覚している、別に能力が高いわけでもない人が、既存の人々が行っている試みを調べるということも知らないが故に、既にあるようなアイデアを ChatGPT に再発明させて独自の名前をつけて何かの提唱者になった気になって 1 人で盛り上がっているが外からみると痛々しい、みたいな人を見かける気がする。
いや、書いてみたけど、さすがに見かけないかも。 私の具体例を出せと言われると出てこなかったので、私が頭の中で勝手に作り上げた ChatGPT 依存のバカ像かもしれない。 存在もしないバカにイラつくの、相当バカなことかもしれない。
しかしまあ、私の名付けた Hyperstrata に関して言えば上記の痛々しい人の条件を結構満たしている気がする。 別に Hyperstrata って言ってもただの引用ネットワークだし、引用ネットワークで文献をつなげること自体は学術出版とかでもよくやられてきているし、何ら新しいことではない。 個人 Web サイトでそれらを使って整理するというのは、まあ一応新規で追加するアイデアではあるが、非常に新規性は薄っぺらいと言わざるを得ない。
ではなぜ Hyperstrata などという大層な名前を割と誰でも思いつきそうな概念につけたか。 別に私は自分が新しい概念を提唱したという立役者としての名誉や尊敬の念を集めたいとかそういうことを思ってやっているわけではないつもりではある。
私は結構このシステムで Web サイトを更新するのがやりやすくて良いなと思っている。 ブログは重たすぎるし cosense (旧 scrapbox)的な庭的なのを育てるのも苦手だ、という人でも気軽に更新できる個人 Web サイトの形態としてはやりやすい気がする。 ので、気軽にいろんな人にこの形態での Web サイトを作って試してみてほしいなあと思っている。 良いものだからいろんな人に使ってみてほしいという感じ。 もちろん合う合わないがあるだろうから、すべての人が Hyperstrata を作るべきとは思わないけど、人によっては Web サイトの更新が楽しくできるようになって良いなあと感じることもあるんじゃないかなと思うので、気軽に何か試したりしてみてほしい。
そして、人に勧める上では概念を毎回説明するより名前があったほうが便利なのである。 そこでこの概念に何らかの広める上でのキャッチーな名前をつけることを考えた。
特に同じ領域で Digital Garden というカッコいい用語があるのである。 これに渡り合えるだけのキャッチーで格好良い命名を考えなければならない。 ということで、格好良さを念頭において命名を考えて色々ぐるぐる回り続けた結果、最終的にひねり出されたのが Hyperstrata である。
この Hyperstrata に決定するまでの間に考えた名前の没案を次に示しておこうかなと思う。
命名没案
命名に当たっては最初に自分だけで色々頭をひねって考えて、途中で LLM に色々相談をして、最終的にそれらの LLM の意見と自分で考えていたものを組み合わせたりしてひねり出した。 それぞれ個別に出した案とそれを当時何を考えて没にしたかについて見ていこう。
自分だけで最初に考えた案
積み重ねる時間軸があるということで歴史系のワードが向いてそうかなと最初に考えた。
没案1 「デジタル思考史」
思考の流れをメモするという意味では良いかも。 でも庭っぽい人が立ち寄って良い感じがしない。
没案2 「思考史の庭」「Garden of Thinking History」
そもそも「思考」なのか? 思想とか思考ではない、ただのメモ書きとかも書いてよいはずである。 思考を書くことに縛りそうな名前はあまりよくないのでは?
もっと言うと歴史を編纂したいわけではない。 メモを残していくと、それが堆積して歴史になるという話である。
それでいうと地層とかの方が歴史よりも良いワードかも。
没案3 「個人の地層」
別に個人であることが重要ではないし、個人 Web サイトだけでなく複数人でこの形態を管理することもあるかもしれない。 更新主体が個人であることは別にこのデジタルガーデンに時間軸を取り戻したい思想において重要事項ではない。
没案4 「デジタル地層」
地層は地層で、どんどん堆積させていくという意味では正しいのだが、それではその堆積したイベント同士を線で結んで複数の流れを作るというのが、地層というワードだけでは素直に出てこない気がする。
色々な観点から取り出すと複数の流れがある、という意味では歴史のほうがやっぱり近いのかなあ? でも歴史もドンピシャなワードではない。 歴史として既に存在するものを、特定の視点で抽出して編纂して意味を見出すのではなく、複数の流れを意識しながら積み重ねていくので、あとから行う解釈ではなく進行形で複数の流れを積み重ねていくからなあ。
没案5 「歴史的デジタルガーデン」「Historical digital garden」
デジタルガーデンの庭性は取り入れつつ、時間軸を入れたよという。
うーん、引用・被引用される記事の相対であって、これは歴史がドンピシャではないのかもしれない。
没案6 「整理された堆積」
ただ堆積するだけでなくネットワークでつないで整理してますよ感。
別にネットワークでつなぐのは整理整頓ではないな。 どの記事がどの記事に関係しているかをつないでいるが、何か全体を見て整理し直しているわけではない気がする。
没案7 「デジタルメモ年代記」
完全に年代記の響きが好きだったから。 火星年代記みたいで。
でも庭っぽさがないしなあ。 年代記は年代順という意味だから一直線であってネットワーク的な感じもしないし。
没案8 「デジタルクロニクル」
クロニクルは年代記を英語にしたもの。 何か RPG の名前っぽくてカッコいい。
しかしクロニクルって個人の自由なことを書くというより、年代順に私見をあまり挟まないで書いていきそうな印象もなくはないので違うかなあ。 ネットワークっぽさがないという意味でもダメそう。
没案9 「アリの巣」
部屋と部屋がつながりながら奥に奥にと枝分かれしたり合流したりしながら伸びていく。 ネットワーク構造が似ている気がする。
一方で、地中のもので観察できるものではないのであまりにも private すぎて庭っぽさがない。
没案10 「アリの巣観察キット」
観察キットにすることで public さを担保した。 が、これは国際的に通じるか微妙だし、何かあんまりアリの巣観察キットが長続きする気がしない。 ひと夏の自由研究で終わる印象があるのでよくない。
LLMに考えさせた案
系譜というワードが出てきた。
没案11 「genalogy」
系譜学を意味する。
しかし、系譜学は純粋な系譜のネットワークだけなくフーコーとかの言う方法論的な話も出てくるかもとのこと。 また、血縁関係っぽい雰囲気が強い。
没案12 「phylomemetics」
系統ネットワーク。
没案13 「系譜学的メモ」
系譜学というワードがフーコーとかのワードっぽ過ぎてよくない。
没案14 「系譜学的庭園」
無理やり庭っぽさを出している。
没案15 「系譜学的メモ」
これも系譜学のワードの件で没。
没案16 「知的系譜の庭」
うーん、知的ってなんだ。 庭って言っておけば庭性が付与されると思っていないか。
没案17 「系譜的庭」
これも雑な庭でびみょいわね。
没案18 「網状流」「Braided Stream」
地形学の用語で、分岐と合流を繰り返しながら流れる川だって。 流れる思考が水で、分岐と合流を繰り返すネットワークである。
しかし、庭性が弱い。 庭に網状流を作ろう!とか言ってもよく分からないし。
さらに、網状流はその成り立ちが残念ながらあまりこの思想を表していない。 この思想では記事を 1 つずつ書いてそれを繋げて伸ばしていくことが大事である。
一方で網状流はまず川が流れていて、それが堆積とかによって少しずつ枝分かれしたり氾濫とかで枝分かれの仕方が変わったりして形成されていくのだと思う。 1 つずつ追加して行くことで伸びて行くことで網目が形成されるわけではない。
没案19 「デジタルリーフ」「思考礁」
リーフはサンゴ礁とのこと。 サンゴ礁は自分の過去の骨格の上に新し枝分かれして積み重なって育つ。 古い部分は積み重なって土台になるとのこと。
しかしすごい過去の記事を引っ張ってきたり、あるいは複数の記事を引用して記事を書く、みたいな入り組んだ引用のネットワークのイメージがあまりないので没。
没案20 「思考のデルタ」
デルタは三角州のだって。 三角州では川の流れが枝分かれし、また堆積することで土地が育っていく。
堆積と流れという意味ではよさそうだが、これも 1 つずつ記事を追加していく感じとちょっと違う。
没案21 「思考水系」
これも、網状流と同様に 1 つずつ記事を追加していく感じと、川が流れていてそれが変化していくのはちょっと違うかな?と感じて。
没案22 「ハイパークロニクル」
年代記は 1 本の年代順を連想されるという問題をハイパーテキスト性によって解消する。 Web 系の用語でもあり伝わりやすい。
難点はクロニクルが依然として完成した物語や、後から編集された歴史記述を連想させる点。 名前はカッコいいが、歴史のみを書くわけでもないし。。。
没案23 「書き継ぎWeb」
書き換えずに書き継ぐものであるという名前。 「継ぐ」というワードもなんか良さがある気がする。 金継ぎとか継ぎ手とか日本っぽさが微妙にあるかも?
悪くはないが、もう少しキャッチーな名前もあっても良いかも。
没案24 「通時参照Web」
そのまま内容を表しているが、デジタルガーデン的な例えや格好良さが薄い。
没案25 「私設文献網」
まあ、学術文献のネットワークに似ているというならそうだが、何かこれもパンチに欠ける。
没案26 「網状年代記」
年代記ほど歴史に特化させたいわけではない。 歴史書を書きたいのではなく、もっと色々なメモを雑多に書いた結果が歴史となる感じなので、歴史書を書きそうな感じなのはちょっと違う。
没案27 「思考リポジトリ」
Git リポジトリを意識したらしいが、この思想は Git とは異なり親が複数になりうるので違う。
自分とLLMのハイブリッドで出した案
没案28 「ハイパーブログ」
blog が 1 次元の時間軸しか持たないからそれをハイパーにしたというもの。 しかし blog の時点で Web log であり、Web でありネットワークであるはずだったわけで。 ブログの Web log との命名の差分が薄い。
没案29 「ハイパーダイアリー」
クロニクルではなくもっと短なことをなんでも書いてよい場所として日記。 しかし、今度は public 差がなさすぎてあまりに private すぎる。 庭の public に置かれた個人の空間っぽさがさすがになさすぎるか?
没案30 「ハイパージャーナル」
クロニクルでもなくダイアリーでもないものとしてジャーナルは日記でもあり学術誌でも使えるような用語として中間的ではある。 が、ジャーナリズムっぽい連想が出てくるのが微妙。
没案31 「ガーデントレイル」
庭の小道。 道は 1 区画ずつ伸ばしていくから、川とは成り立ちが違うし分岐合流とかも使えるのでは?
とはいえ、庭に道を作るという比喩だとどこまでも広げていく感覚がないのでよくないかも。 引用ネットワークはどこまでも積み重ね続けるのが重要なので。
とここまで来て、ハイパーな地層である「Hyperstrata」にたどり着きました。 「書き継ぎ」と悩んだけど、語感がカッコつけているほうを選びました。
途中で川の比喩は、川として流れができてしまうのと 1 つずつ記事を積み重ねて伸ばしていく感じがちょっと違うかなと思ったり、網状の流れは川に堆積物が溜まったり氾濫したりというので少しずつ形が変わって網状の形が変わっていってできる感じで、過去の引用ネットワークを書き換え続けるわけではないことを考えると違うかな、ということで捨ててしまった。 しかし、shivaduke さん[2]の bayou システムを見ると、川も結橋よかったのではという気もしてこなくはない。

この山のような等高線で示した年代と、そこを流れる川のような記事のネットワーク、最高にカッコいいのでこれを見ると川系の名前にしてもよかったかなという気もしてこなくはない。
ちなみに Hyperstrata で検索するとよく似た Hyperstrada というバイクがもしかして検索で出てくる。 名前は完全に被っていないのだけど、もしかして検索で乗っ取られているので若干微妙かもしれない。 が、まあ Hyperstrata が有名になれば問題ないだろうし、有名にならないならそれはそれで別に完全に名前がかぶっているわけじゃないから良いかなって。